食品製造会社 N社様の事例

〜計画的で継続的な投資で企業の未来をつくる〜

N社様のご支援をしたのは2018年の春、代表の松岡が佐賀市の公的支援機関に赴任して間もなくのことです。N社様は昭和31年に創業された老舗の食品缶詰の製造会社です。平成19年にJAS(日本農林規格)に認定され、平成28年には水産加工施設HACCP認定を受けられ、平成29年には地域未来牽引企業にも選定されました。ただ、食品に求められる安全基準は年々厳しくなる反面、検査現場での目視、手作業の改善は少なく、ベテラン社員の技能に頼る生産方法に変わりはありません。社員の高齢化とともに、根気のいる業務は若い人には習得しづらく、技能の承継が大きな課題となっていました。

一方で、海外からの食品用缶詰の輸入も増加の一途をたどっており、生産性の向上による、収益性の改善も求められていました。主力製品の一つである赤貝の缶詰は2014年に全国で1,000トンの生産があったものが、2018年には209トンと20%近くに落ち込んでいました。

そんな外部環境の中、N社様が取組んだのが、缶詰の巻締後の人手による検査の機械化です。人手による検査は検査者の検査ムラを許さないため、特定の人にしかできません。しかも、限られた人数で長時間検査をするため、検査者に忍耐を強いる大変な作業でした。

その新たな検査装置の投資に際し、松岡が支援したのが「ものづくり補助金」の申請のコンサルでした。

「ものづくり補助金」とは、経済産業省が行う中小企業、個人事業主向けの補助金です。

一般枠では、投資額の2/3、もしくは上限1,000万円のいずれか低い方が補助金として支給されます。2020年は特に新型コロナに対応する投資として、新型コロナ枠が設けられ、投資額の3/4、もしくは1,000万円のいずれか低いほうが補助金として支給されることとなりました。

本補助金の特筆すべき点は、申請書作成の過程で、当該企業の持つ強み、弱みが見えてくることです。それにより、強みはさらに強くし、弱みは克服して強みと変えていく。そのような経営全般にわたる助言に至ることもあります。

 

以下は、N社様の実際の申請書の一部を抜粋したものです。

【人手による巻締検査の様子】

 

【水産缶詰の製造工程図】

最終製品検査である巻締外観検査を画像処理機検査機に置き換えることで、人にやさしい職場・複数の人ができる検査工程に替えることができます。特定の技能者に依存せず、高齢の方や未経験者でも安心して働ける職場にできました。カメラで巻締部分を画像解析し基準設定値(巻締推奨値)から外れるものは自動的に除外します。

この取り組みにより、下記の効果を得て、課題を解決することができました。

・手動箱詰めのAラインと自動箱詰めのBラインを同時に稼働することができます。

・自動包装機との連動で工程速度が上がることにより殺菌後の中間在庫がなくなります。

・人手による巻締検査が簡便化され工数削減が可能です。

・得られるデーターから工程全体の不具合箇所が判明し、不良缶の原因が特定できます。

 

当検査装置の導入によって現在実施している前処理工程での機械式通過型巻締検査と包装工程でのカメラ画像処理機による二重検査で当社が行う「巻締」の信頼性が増します。資金力の大きな大手水産会社等の缶詰製造では既に導入が進んでおり、中小企業の当社が導入することで、OEM先と同等の信頼性を得ることで、受注増が期待されます。

みかん類や地元の水産物で缶詰製造を行う企業は佐賀県では弊社が唯一であり、九州においても2~3社です。最早、競争よりも協力し、生き残りの道を探ることのほうが重要です。設備投資で得られるメリットの情報を共有し、競合他社と連携して行くことが可能となるのです。

 

このような新たな投資により、N社様の生産性は上がり、従来、5名~10名の人員を要した検査工程が3名の人員で済むようになりました。同時に、特定の人員しかできない作業ではなく、高齢者でも新卒者でも誰もが可能な検査作業となったのです。

投資前の試算では、金額にして年間450万円超の経費削減効果が見込めました。同時に削減できた工程の人員は配置転換や多能工化で生産性が大きく向上しました。生産余力をすべて生産に回したとすると5,000万円超の売上拡大の可能性も期待できました。

当補助金に取組んだ当初、担当のS部長からは、「自社がおかれている業界は古い産業ですから」との言葉をうかがいました。しかし、代表の松岡はこう付け加えました。

古い産業であればこそ、最後まで市場に残った企業には「大きな残存者利益」が見込めます。それを実現するためにも、計画的で継続的な投資が必要ですと、S部長にお伝えしたのでした。

N社様は、その翌年もものづくり補助金にチャレンジされ、みごと2年連続の採択を勝ち取りました。もちろん、その時も代表の松岡が申請書作成のコンサルでお手伝いしたのは言うまでもありません。

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